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ご挨拶

リーガルイノベーションへの誘い

一橋大学社会科学高等研究院教授 角田美穂子

一橋大学とケンブリッジ大学は、英国リサーチアンドイノベーション(UKRI)と日本の社会技術振興機構(JST)の支援を受け、「法制度と人工知能」という国際共同研究プロジェクトを令和2年1月から実施してきました[1]。このプロジェクトは、日本政府が示している未来社会のビジョン「Society5.0」と法制度の核をなす「司法判断」に照準を合わせ、「Society5.0に相応しい司法」を実現するための新しい法学の探究に挑んできました。その過程で「司法の核心をなす法的推論という緻密で高度な言語ゲームは、どこまでコンピュータ言語に落とし込むことが可能か」という問いを立てる[2]とともに、さまざまな構造的な社会課題が山積する現代にあって社会課題「解決」先進国となることを目指すという目標に貢献できる法学となるべく、法制度の激変する社会経済への「適応」を捉える「リーガルイノベーション」という新しい法学のコンセプトを提案してきました[3]

もちろん、「Society5.0に相応しい司法」の実現には、革新的テクノロジーが経済社会を変えることにとどまらない「司法」特有の探究が必要です。そして、法学はいうまでもなく、最先端テクノロジーを用いたAI研究、さらには将来の社会経済の激変を的確に把握する新しい社会科学的手法との協働が必須といえるでしょう。 データサイエンスとの協働による新しい社会科学を模索している一橋大学において、研究パートナーであるケンブリッジ大学の方々と一緒に、この新しい研究領域に挑戦できることを大変うれしく思っております。是非、このワクワクする知的営為に、奮ってご参加ください。

[1] https://www.jst.go.jp/ristex/hite/community/project000421.html; https://www.jbs.cam.ac.uk/centres/business-research-cbr/research/research-projects/project-legal-systems-and-artificial-intelligence/

[2] Simon Deakin and Christopher Markou (eds.), Is Law Computable? Critical Perspectives on Law and Artificial Intelligence, Hart, 2021.

[3] 角田美穂子・フェリックス・シュテフェック共編著『リーガルイノベーション入門』弘文堂、2022年。Felix Steffek & Mihoko Sumida eds., Legal Innovation: Technology, the Legal Profession and Societal Change, Cambridge University Press, Coming Soon.